「もっと軽快に歩くことができれば・・・」
山登りをしたことがあれば誰でも一度はそう思うはず。どうしても登山では装備が嵩んでしまうものだが、トレイルが整備された低山ならあれこれ荷物を増やす必要はない。「水と行動食、それに防寒着」数時間だけを過ごすのに必要な装備だけを持って、山を走ってみよう。多少はきつい箇所があるかもしれない、けれど歩きとは違う風を感じ、きっと視界にも新しいものが飛び込んでくるはずだ。
山の新しい楽しみ方「トレイルラン」は、自然に親しみながら自分とも向き合える素敵なスポーツなのだ。
トレイルランの基本は
山に親しむことから
登山にはじまりスキーやクライミングなど、もともと山を対象に楽しむ手段はじつに多様。トレイルランにしても難しく考える必要はない。基本的には山歩きの延長で無理に走らなくてもいいし、ペースも個々で違っていい。専門的な技術がなくても気軽に始められるはずだ。
京都・大文字山を
トレイルランで行く
今回はまだ経験の浅い2人と共にトレイルランを楽しんだ。1人の新名さんはクライミングにも積極的に取り組む山岳ガイドで、もう1人の野口さんは元MTBのレーサー。いずれも山の世界に精通するエキスパートだが、トレイルランは始めたばかりという。
心地よい春の陽気。念入りにストレッチをしてからスタートした。目指すは標高466mの京都・大文字山の山頂。この山は手軽に登ることができて縦横無尽にトレイルが伸びている。
走り始めてみると二人のペースは予想の通りかなり速く、あっという間に視界から消えてしまった。やはり心肺機能と筋力が並外れているのだろうか。しばらく登ったところで休憩をとる。
「MTBも当然楽しいけど、トレイルランにもまた別の楽しさがあります」と野口さん。
「どんなところが魅力的に思いますか?」
「スピードがそれほど速くないため自然をじっくり堪能できますね。それに自然の地形を自分のイメージでクリアしていくときは、MTBと同じようなアドレナリンがでるような気がします」
「MTBだと技術的にも難しいところがありますよね?」
「確かにそうで、トレイルランのほうが危険も少ないでしょうね。よそ見していても行動できるし(笑)」
京都市内を一望しながらゆっくりめの休憩をしたら、次は山頂を目指す。相変わらずペースは落ちないが要所で遅い同伴者(我々)を待っていてくれる。レースやトレーニングではこうもいかないが、みんなで楽しむにはこれぐらい肩の力を抜いていたほうが良いのかもしれない。トレイルランは個人競技でありながら、仲間同士でも楽しむことができるスポーツである。
山頂に着いたとき新名さんが言った。
「山を走るときって、野生の勘がはたらくというのか、神経が研ぎすまされている感じがします」
「そうでしょう。下りではそれなりにスピードも出るし、転倒したらタダでは済まないですしね」
「そこがマラソン(ジョギング)と大きく違うところ。緊張感をもって走るのは、街中では味わえません。それと山登りをやっている人は筋肉も山の斜面に慣れているため、割とすんなりトレイルランに入っていけると思いますね」
山頂からはひたすら長い下りを行く。膝への負荷が大きいためやや慎重に行くが、慣れてきたら地形を遊ぶようにスムーズさが増していく。オーバースピードは禁物だけどせっかく苦労して登った山、凸凹の地形を1セクションずつかみしめるように下山路をひた走る。
限界まで自分を追い込まず、仲間同士で楽しむのなら「次はどこに行こうか」くらい余裕を残しておきたい。筋肉が出来上がってから次のステップに進めばいい。
山の雪も急速に解け始め、いよいよ本格的なシーズンがはじまる。



